IUPAC法における配座の命名

IUPAC(国際純正応用化学連合、International Union of Pure and Applied Chemistry)でも配座について記載があります。IUPAC法では、一般に用いられている配座名と多少異なっています。1,2-ジクロロエタンを例にしました。1,2-ジクロロメタンでは、二つの塩素原子が炭素-炭素結合のねじれ角を決めます。また、IUPAC法では二面角に前後30°の幅を持たせており、二つの塩素の二面角jが
φ = 0°±30°のとき synperiplanar (cp)
φ = 60°±30°のとき synclinal (sc)
φ = 120°±30°のとき anticlinal (ac)
φ= 180°±30°:のとき antiperiplanar (ap)

と定義されています。synperiplanarはcis、antiperiplanarはtrans、synclinalはgauche或いはskewと読んでも良いことになっています。synは「同じ」、antiは「反対」、periplanarは「周辺、周り」と「平面」との意味が合わさったもの、clinal、skewは「斜め」という意味です。


複雑な分子では以下の規則で議論する原子(団)を選択します。議論する結合の両端の原子にそれぞれ結合している原子(団)の内、


① 一つの炭素に結合している原子(団)が全て異なるとき,
    Cahn-Ingold-Prelog の順位則に従い、それぞれから一番優位な原子(団)を選ぶ。
② 一つの炭素に結合している原子(団)のうち一つだけ異なるとき,
    異なった一つの原子(団)を選ぶ。
③ 一つの炭素に結合している原子(団)全てが同じとき,
    ねじれ角の最も小さくなる原子(団)を選ぶ。
ことになっています。この選択を、配座を議論する結合の両端の原子で行います。この議論はsp3炭素に限ったことでは無く、窒素原子や、sp2炭素でも取り扱うことが出来ます。規則③はstaggard配座か、もしくはeclipsed配座かでの議論となりあまり重要ではないかもしれません。